情報統合思念体への手紙

16号廃墟へ向かう道

場合分けで解答する問題

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

とする.このとき

(1)  |2x-1|の絶対値を外せ.

(2)  方程式|x-6|=2xをxについて解け.

(設計)

(1)について

 P:2x-1≥0 i.e.  x≥\displaystyle\frac{1}{2}のとき

 |2x-1|=2x-1

 Q:2x-1 <  0 i.e.  x <  \displaystyle\frac{1}{2}のとき

 |2x-1|=-(2x-1)=-2x+1

と置く.このとき P,Q\vdash P∨Qより

 P∨Q:|2x-1|=2x-1∨|2x-1|=-2x+1

で表される.

(2)について

(設計)

 P:x-6≥0 i.e.  x≥6のとき

 |x-6|=2x i.e.  x-6=2x i.e.  x=-6

 Q:x-6 <  0 i.e.  x <  6のとき

 |x-6|=2 i.e.  -x+6=2x i.e.  x=2

と置く.このとき P,Q\vdash P∨Qより

 P∨Q:x=-6(x≥6)∨x=2(x <  6)

に関して Pは不成立であるから,これを棄却し求める解は x=2である(選言三段論法).

☆ 計算問題は「設計」のみで解答する.

全準同型写像の誘導写像も全射であること

 前回の記事の Λ-準同型写像を誘導写像と呼ぶ.

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

とする.このとき fが全準同型写像ならば,誘導写像 f^*も全準同型写像である.

(設計)

 P:fが全準同型写像

 Q:f^*が全準同型

と置く.このとき P,Q\vdash P→Qより

 P→Q:fが全射ならばf^*も全射

である.

(仕組)

  Λ-準同型写像 fについて

 f:M→N, f(M)=N (fは全射)

と仮定する.像の性質より f^*(M/M')⊆N/N'は成立するので N/N'⊆f^*(M/M')を計算する.すなわち

 f^*(\bar{x})∈N/N'→f^*(\bar{x})∈f^*(M/M')

をいう.

①に関して

 まず f^*(\bar{x})∈N/N'に対して

 f^*(\bar{x})∈f(M)/N'     fは全射 , f(M)=N

i.e. 

 f^*(\bar{x})=f^*(x)+N'     f^*(x)∈f(M)

 =f(x)           x\mapsto \bar{x}, f(x)\mapsto f^*(\bar{x})

と書ける.

②に関して

 次に f^*(\bar{x})∈f^*(M/M')を考えれば

 f^*(\bar{x})=f^*(x)+M'     f^*(x)∈M

 =f(x)           x\mapsto \bar{x}, f(x)\mapsto f^*(\bar{x})

である.ここで①と②に→-導入則を適用すれば

 f^*(\bar{x})∈N/N'→f^*(\bar{x})∈f^*(M/M')

が成立する.▢

剰余加群M/M'から剰余加群N/N'へのΛ-準同型写像について

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

 Λ:非可換環

 M:Λ- 加群

 M'⊆M

 M':Mの部分加群

 (M', M):順序対

 f:(M', M)→(N', N)  順序対の群準同型写像

とくに

 f:M→N   Λ-準同型写像

 f(M'):M'の像

 f(M')⊆N'

 f(M')=\{f(m')|m'∈M'\}

 x_1,x_2∈m+M'   M'を法とするMの剰余類

 m+M'=\{m+m'|m∈M\}

とくに x_1,x_2∈Mであるからこれを

 x_1+M',x_2+M'

で表すとする.このとき

 f(x_1)-f(x_2)

 =f(x_1-x_2)   fはΛ- 準同型

 ∈f(M')⊆N'   M'は加法群であるからx_1-x_2∈M'

が成立する.これより, f(x_1) f(x_2) N'を法とする Nの剰余類に属するので( f(x_1)+N',f(x_2)+N'),次の写像を定義できる:

 f^{*}:M/M'→N/N'

このような f^{*} Λ- 準同型写像である.

(設計)

 P:f^{*}(\overline{x_1+x_2})=f^{*}(\bar{x_1})+f^{*}(\bar{x_2})

 Q:f^*(\overline{λx})=λf^*(\bar{x})

と置く.このとき P,Q\vdash P∧Qより

 P∧Q:f^*はΛ- 準同型写像

である.

(仕組)

 M→M/M', x\mapsto \bar{x}   Λ-準同型

 \bar{x}:=x+M'   (x∈M)

 このときの写像は, Λ-加群 Mから剰余加群 M/M'への自然写像である.また

 N→N/N', y\mapsto \bar{y}   Λ-準同型

 \bar{y}:=y+N'   (y∈N)

も同じ構造である.とくに今回は, f(x_1),f(x_2)∈Nであるから

 x\mapsto f(x)

 f(x)\mapsto f^*(\bar{x})

に注意する.さて, f^*について

 f^*:M/M'→N/N'

を考えると

①  x_1,x_2∈m+M'

i.e.

 \bar{x_1}:=x_1+M'

 \bar{x_2}:=x_2+M'

②  f(x_1),f(x_2)∈n+N'

i.e.

 f^*(\bar{x_1}):=f(x_1)+N'

 f^*(\bar{x_2}):=f(x_2)+N'

と表示できる.

(1)  Pについて

 f^*(\overline{x_1+x_2})

 =f(x_1+x_2)   f(x)\mapsto f^*(\bar{x})

 =f(x_1)+f(x_2)   fはΛ-準同型

 =f^*(\bar{x_1})+f^*(\bar{x_2})   f(x)\mapsto f^*(\bar{x})

 したがって

 f^*(\overline{x_1+x_2})=f^*(\bar{x_1})+f^*(\bar{x_2})

が成立する.

(2)  Qについて

 f^*(\overline{λx})

 =f^*(λ\bar{x})  剰余加群の積

 =f(λx)   f(x)\mapsto f^*(\bar{x})

 =λf(x)   fはΛ-準同型

 =λf^*(\bar{x})   f(x)\mapsto f^*(\bar{x})

 それゆえ

 f^*(\overline{λx})=λf^*(\bar{x})

が成り立つ.

 以上より, f^* Λ-準同型写像であることがわかる.▢

 

 

 

絶対値の方程式と不等式

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

とする.

問 次の式を解け.

(1)  |x-3|=5

(2)  |x-3| <  5

(3)  |x-3|≥5

(解答)

(1)について

(設計)

 |x-3|=5 i.e.  x-3=±5 i.e.  x-3=5∨x-3=-5より

 P:x-3=5 i.e.  x=8

 Q:x-3=-5 i.e.  x=-2

と置く.このとき P,Q\vdash P∨Qから

 P∨Q:x=8∨x=-2

を得る.

(仕組)

 パラメタ xの方程式 |x-3|=5を言い換えると x-3=±5と書ける.すなわち

 x-3=5∨x-3=-5

である.このような式をセンテンス P,Qで置きそれぞれを計算すれば

 P:x=8

 Q:x=-2

で表される.たとえば x=8に対して∨-導入を適用すれば

 P∨Q:x=8∨x=-2

を得る.

(2)について

(設計)

 |x-3| <  5 i.e.  -5 <  x-3 <  5

i.e.  -5 <  x-3∧x-3 <  5より

 P:-5 <  x-3 i.e.  -2 <  x

 Q:x-3 <  5 i.e.  x <  8

と置く.このとき P,Q\vdash P∧Qから

 P∧Q:-2 <  x <  8

と成る.

(仕組)

 パラメタ xの不等式 |x-3| <  5を換言すると -5 <  x-3 <  5と書ける.さらに

 -5 <  x-3∧x-3 <  5

である.これに∧-除去を適用してセンテンス P,Qと置き,それぞれを解けば

 Pについて  -5 <  x-3 i.e.  -2 <  x

 Qについて  x-3 <  5 i.e.  x <  8

を得る.そして,∧-導入を適用することによって

 -2 <  x <  8

が求まる.

(3)について

(設計)

 |x-3|≥5 i.e.  x-3≤-5∧5≤x-3より

 P:x-3≤-5 i.e.  x≤-2

 Q:5≤x-3 i.e.  8≤x

と置く.このとき P,Q\vdash P∧Qから

 P∧Q:x≤-2∧8≤x

である.

(仕組)

 パラメタ xの不等式 |x-3|≥5を言い換えて,それらをセンテンス P,Qと置く.そして,∧-導入を適用すれば答えが求まる.▢

 

Λ-準同型写像に関するいくつかの定義と性質

 f:M→N (左Λ- 準同型写像)

とする.

定義

 P:x≠y

 Q:f(x)≠f(y)

と置く.このとき P,Q \vdash P→Qより

 P→Q:fは単射準同型写像

という.

☆ 上への写像とは

 f(M):=\{f(x)|x∈M\}

 f:M→N

に対して f(M)=Nが成り立つことをいう.

定義

 P:fがMをNの上に写像する

と置く.このとき P\vdash P→Pより

 P→P:fは全射準同型写像

と呼ぶ.

定義

 P:fが単射準同型写像

 Q:fが全射準同型写像

と置く.このとき P,Q\vdash P∧Qより

 P∧Q:fは同型写像

という.これを M\cong Nで表す.また,その逆写像 f^{-1}も同型写像 N\cong Mであり, f f^{-1}は互いに逆同型写像である,という.

☆ 注意

 f:M→N (左Λ- 準同型写像)

 g:N→M (左Λ- 準同型写像)

とする.このとき

 [fとgがそれぞれ逆同型写像である]

 ⇔[gfとfgがそれぞれ恒等写像に成る] ①

が成立する.

 

☆ 恒等写像とは

 gf:M→N→M x\mapsto x

 fg:N→M→N y\mapsto y

 

(設計)

 P:M\cong N

 Q:N\cong M

 R:gfが恒等写像

 S:fgが恒等写像

と置く.このとき

 P→R∧Q→S\dashv \vdash R→Q∧S→P

より①は成立する.

(仕組)

  M→N全単射であり,その逆写像全単射であるから gfは恒等写像(全単射)である.すなわち

 M→N→M, x\mapsto x\mapsto x

と書ける.同様にして N→M fgについても言える.

☆ 恒等写像全単射であることは 恒等写像のf(x)=xよりわかる.

単射

 x≠y → f(x)≠f(y)   f(x)=x, f(y)=yによる.

全射

 f(M)⊆Nは像の定義によるので,その逆 N⊆f(M)を考えると

 x∈N→x=f(x)∈f(M)

による.

P→R∧Q→S -| |- R→Q∧S→P

 P,Q,R,......:センテンス

とする.このとき

 P→R∧Q→S  \dashv \vdash R→Q∧S→P

が成立する.

(証明)

 まず

 P→R∧Q→S \vdash R→Q∧S→P

を示す.

1  (1)  P→R∧Q→S  仮定

1  (2)  P→R  1. ∧-除去

1  (3)  Q→S  1. ∧-除去

4  (4)  P  仮定

5  (5)  Q  仮定

1,4  (6)  R  2,4. →-除去

1,5  (7)  S  3,5. →-除去

1,4  (8)  R→Q  5-6. →-導入

1  (9)  S→P  4-7. →-導入

1  (10)  Q  6,8. →-除去

1  (11)  P  7,9. →-除去

    (12)  R→Q  6-10. →-導入

    (13)  S→P  7-11. →-導入

    (14)  R→Q∧S→P  12,13. ∧-導入

 次に

 P→R∧Q→S \dashv R→Q∧S→P

をいう.

1  (1)  R→Q∧S→P  仮定

1  (2)  R→Q  1. ∧-除去

1  (3)  S→P  1. ∧-除去

4  (4)  R  仮定

5  (5)  S  仮定

1,4  (6)  Q  2,4. →-除去

1,5  (7)  P  3,5. →-除去

1,4  (8)  Q→S  5-6. →-導入

1  (9)  P→R  4-7. →-導入

1  (10)  S  6,8. →-除去

1  (11)  R  7,9. →-除去

    (12)  Q→S  6-10. →-導入

    (13)  P→R  7-11. →-導入

    (14)  P→R∧Q→S  12,13. ∧-導入

 

 

√2が無理数であることの構造

 P,Q,R,......:センテンス

とする.このとき \sqrt{2}無理数であることを示せ.

(設計)

 P:\sqrt{2}が無理数である

と置く. ¬P, ¬P→P\vdash Pより成り立つ.

(仕組)

 ¬P:\sqrt{2}が無理数でない i.e.  \sqrt{2}が有理数である

による.設計では ¬P→Pとあるが,このかたちをそのまま用いることはない.それが人工言語自然言語との違いだと思われる.▢