情報統合思念体への手紙

16号廃墟へ向かう道

¬PからPを導出する理屈

 P,Q,R,......:センテンス

とする.このとき

 ¬P, ¬P→P\vdash P

が結果的に無仮定で成立する(述語論理の∀-導入適用可能). 

(証明)

1  (1)  ¬P  仮定

2  (2)  ¬P→P  仮定

1,2  (3)  P  1,2. →-除去

1  (4)  ¬P→P  1-3. →-導入

1  (5)  \bot  1,3. ¬-除去

    (6)  ¬¬P  1-5. ¬-導入

    (7)  P  7. DN規則

 

不等式の文章題

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

とする.このとき(問題文は省略)

(設計)

 P:1個160円のりんご(できるだけ多く)

 Q:1個130円のみかん

 R:りんごとみかんを20個買う

 S:200円のかご

 T:代金の合計を3,000円以下にしたい

に対して P,Q,R,S,T\vdash P∧Q∧R∧S∧Tより答えが求まる.

(仕組)

 まず,りんごの個数を xと置く(存在仮定).次に以下のような方程式を立てる.

 160x+130(20-x)+200≤3000

このような xについて解けば

 x≤\displaystyle\frac{20}{3}=6.666\cdots\cdots

を得る.そして,りんごはできるだけ多く買うので最大の正整数を考えると

 x=6  (存在仮定除去)

が求まる.▢

☆ 存在仮定とは仮定落としをしなくてもよい仮定のことをいう.つまり,存在仮定は最終的に存在仮定除去が適用されるので,通常の仮定落としを考えなくてよい.

左Λ-準同型写像の性質

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

 Λ:非可換環

 M,N:左Λ- 加群

 f,f_1,f_2:M→N ( 左Λ- 準同型写像)

 g,g_1,g_2:N→L ( 左Λ- 準同型写像)

とする.このとき

(設計)

 P:g(f_1+f_2)=gf_1+gf_2

 Q:(g_1+g_2)f=g_1f+g_2f

 R:(λg)f=g(λf)

 S:g(λf)=λ(gf)

 T:λ:=1 ( 1∈Λ)

 P,Q,R,S,T\vdash P∧Q∧R∧S∧Tより成立する.

(仕組)

(ア)  Pについて

①  g(f_1+f_2)

 =g(f_1(x)+f_2(x))  

 =g(f(x))   f(x):=f_1(x)+f_2(x)

 =gf(x)

 =gf

②  gf_1+gf_2

 =g(f_1(x))+g(f_2(x))

 =g(f_1(x)+f_2(x))   gは左Λ-準同型

 =g(f(x))   f(x):=f_1(x)+f_2(x)

 =gf(x)

 =gf

①と②より成り立つ.

(イ)  Qについて

①  (g_1+g_2)f=g(x)f(x)=g(f(x))=gf(x)=gf

②  g_1f+g_2f=g_1(f(x))+g_2(f(x))=g(f(x))=gf(x)=gf

①と②による.

(ウ)  R∧Tについて

 λg=1g=g

 λf=1f=f

について,これら 左Λ-準同型写像の集合は 左Λ-加群の構造をもつことから成立する.したがって R∧Tがいえる.

(エ)  S∧Tについて

 (ウ)と同様の理由で

 λf=1f=f

 λ(gf)=1(gf)=gf

が成立する.▢

P∧Q→Rについて

 P,Q,R,......:センテンス

とする.このとき,次の論理式は文論理及び述語論理をみたすように成立する.

 P∧Q→R

(証明)

1  (1)  P∧Q  仮定

2  (2)  R  仮定

1  (3)  P  1. ∧-除去

1  (4)  Q  1. ∧-除去

1  (5)  P∧Q  3,4. ∧-導入

1  (6)  P∧Q→R  2-5. →-導入

1  (7)  R  5,6. →-除去

    (8)  P∧Q→R  5-7. →-導入

Hom(M,N)がΛ-加群を成すこと

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

 Λ:可換環

 f∈\mathrm{Hom}_Λ(M,N)

 λ∈Λ(固定)

とする.このとき

 P:g(x):=λf(x) i.e.  g=λf

 Q:x_1:=f(x_1)

 R:x_2:=f(x_2)

 S:g∈\mathrm{Hom}_Λ(M,N)

と置くと P∧Q∧R,S\vdash P∧Q∧R→Sが成立する.

(理由)

 ここで考えることは, g Λ-準同型写像に成るのか,ということである.

(ア)  f(λx)=λf(x)について

  f∈\mathrm{Hom}_Λ(M,N)より gは(ア)をみたす( f Λ-準同型であるから).

(イ)  f(x_1+x_2)=f(x_1)+f(x_2)について

 g(x_1+x_2)=λf(x_1+x_2)=λ(f(x_1)+f(x_2)) 

 N Λ-加群であるので次のように変形できる

 =λf(x_1)+λf(x_2)=g(x_1)+g(x_2)

より gは(イ)をみたす.

 したがって, g∈\mathrm{Hom}_Λ(M,N)と成る.▢

(理由)

 P:g∈\mathrm{Hom}_Λ(M,N)に対して x\mapsto λx

 Q:λ(x_1+x_2)=λ(x_1)+λ(x_2)

 R:(λ_1+λ_2)x=λ_1x+λ_2x

 S:λ_1(λ_2x)=(λ_1λ_2)x

 T:1x=x  ( 1∈Λ)

 U:x:=x_1+x_2

 V:λ:=λ_1+λ_2

と置く.このとき P,Q,R,S,T,U,V\vdash P∧Q∧R∧S∧T∧U∧Vより

 P∧Q∧R∧S∧T∧U∧V:\mathrm{Hom}_Λ(M,N)はΛ- 加群を成す

を得る.実際

 Qについて

  λx∈Nに関して

 λx=λ(x_1+x_2)=λx_1+λx_2  ( NはΛ- 加群)

 Rについて

 N∋λx=(λ_1+λ_2)x=λ_1x+λ_2x  ( NはΛ- 加群)

 Sについて

 N∋λ_1(λ_2x)=(λ_1λ_2)x  ( NはΛ- 加群)

 Tも同様の理由で成立する.

 以上より, \mathrm{Hom}_Λ(M,N)はΛ- 加群を成すことがわかる.

 

  • 結果

  Λ可換環である,という仮定をしたが,結果としてその交換性を用いることは無かったので, Λを非可換環とし(加法群であることは残る) \mathrm{Hom}_Λは左 Λ-加群である,と考える.

Hom(M,N)が加法群であること

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

とする.

 前回, f_1,f_2:M→N, f(x):=f_1(x)+f_2(x) Λ-準同型写像であることを確かめた.これは f_1,f_2について, Λ-準同型写像の加法 f_1+f_2を定めたことに成る.いま, Λ-準同型写像 M→Nの集合

 \mathrm{Hom}_Λ(M,N)

を考えると,演算 f_1+f_2に対して,これは加法群を成す.

(証明)

Ⅰ. 結合律

 P:f_1,f_2,f_3∈\mathrm{Hom}_Λ(M,N)について

    (f_1+f_2)+f_3=f+f_3  (f:=f_1+f_2)

 Q:f_1,f_2,f_3∈\mathrm{Hom}_Λ(M,N)に関して

    f_1+(f_2+f_3)=f_1+g  (g:=f_2+f_3)

 R:f+f_3=f_1+gとなるようにf,g,f_1,f_3を選ぶ(パラメタの自在性)すなわち f=gあるいはf_1=f_3

と置く.このとき, P,Q,R\vdash P∧Q∧Rより

 P∧Q∧P:(f_1+f_2)+f_3=f_1+(f_2+f_3)

が成立する.

Ⅱ. 単位元(零元)

 P:0:=f(0)

 Q:f+0=f

 R:f+0=0+f

と置く. P,Q,R\vdash P∧Q∧Rより

 P∧Q∧R:\mathrm{Hom}_Λ(M,N)の単位元が存在する

と成る.実際

(ア)  f+0=f

 f+0=f(x)+f(0)

 =f_1(x)+f_2(x)+f_1(0)+f_2(0)

 =f_1(x)+f_1(0)+f_2(x)+f_2(0)

 =f_1(x+0)+f_2(x+0)

 =f_1(x)+f_2(x)   x+0=x∈M(Mは加法群)

 =f(x)

 =f

i.e.  f+0=f

が成り立つ.

(イ)  f+0=0+f

 (ア)より f+0=fであるから,同様にして 0+f=fである.したがって f+0=0+fが成立する.

Ⅲ. 逆元

 P:f

 Q:-f:=f(-x)

 R:f-f=0

 S:f-f=-f+f

と置く.このとき P,Q,R,S\vdash P∧Q∧R∧Sより

 P∧Q∧R∧S:\mathrm{Hom}_Λ(M,N)に逆元が存在する

と表される.というのも

(ア)  Rについて

 f+(-f)

 =f_1(x)+f_2(x)+f_1(-x)+f_2(-x)

 =f_1(x)+f_1(-x)+f_2(x)+f_2(-x)

 =f_1(x-x)+f_2(x-x)

 =f_1(0)+f_2(0)

 =f(0)

 =0

i.e.  f+(-f)=f-f=0

と書けるからである.

(イ)  Sについて

 (ア)と同様にして -f+f=0が成り立つ.

 以上より,準同型写像の集合 \mathrm{Hom}_Λ(M,N)は加法群を成す.▢

 

Λ-準同型写像の意義

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

 M,N:(左)Λ- 加群

 f:M→N (写像)

とする.

 

☆ 写像とは何か?

 ここでは,言葉の意味について考えることはない.それが「抽象」である.たとえば(左) Λ-加群とは何か? と言われたとしよう.私は(今覚えている限りで)

①  λ(x_1+x_2)=λx_1+λx_2

②  (λ_1+λ_2)x=λ_1x+λ_2x

③  λ_1(λ_2x)=(λ_1λ_2)x

④  1x=x

をみたすような λ,λ_1,λ_2∈Λ(非可換環)及び x,x_1,x_2∈M(加法群)である,と答えたとする.では,非可換環とは何か? 加法群とは何か? 群とは何か? 二項演算とは何か? 順序対とは何か? 直積集合とは何か? 集合とは何か? というように用語の意味を遡り続けることになる(第一原因への言及).そして,最も重要なことは記憶というのは忘却するものである,ということだ.

 もし,仮に①から④を答えたからといって, Λ-加群の意味を知っている訳ではない.私は Λ-加群の性質・作用を知っているだけで,「その物自体」をわからない.それゆえ, Λ-加群それ自体に意味はない,と考える.私はこの無意味な物自体への質問を禁止する.私はただ Λ-加群というものを受け入れて,ただその物がもつ性質や作用を書くのみである.

 これより,抽象代数学での用語について物自体への質疑を禁ずる.もし,そのような問い質しがあれば,その質問者に対して事物の第一原因を答えて貰う.そして,集合や写像を考えるうえで,逐一その要素を考えたり,表示したりすることも止める.それが事物を抽象化する,ということに繋がると思うからだ.

 

 このとき

 P:f(x_1+x_2)=f(x_1)+f(x_2)

 Q:f(λx)=λf(x)

と置き, P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:写像fを(左)Λ-準同型写像

という.

例1

 N:Mの部分加群

とする.このとき,包含写像 M→N (左)Λ-準同型写像である.

(理由)

 P:f(x_1+x_2)=x_1+x_2=f(x_1)+f(x_2)

 Q:f(λx)=λx=λf(x)

と置き P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:包含写像は(左)Λ-準同型写像である

を得る.▢

例2

 N:Mの部分加群

とする.このとき,自然写像 M→M/N Λ-準同型写像である.

(理由)

 P:f(x_1+x_2)=\overline{x_1+x_2}

 =\bar{x_1}+\bar{x_2}  (剰余群の演算)

 =f(x_1)+f(x_2)

 Q:f(λx)=\overline{λx}=λ\bar{x}=λf(x)

と置き P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:自然写像はΛ-準同型写像である

がわかる.▢

例3

 f:M→N ((左)Λ- 準同型)

 g:N→P ((左)Λ- 準同型)

とする.このとき f,gの合成写像 gf:M→P (左)Λ-準同型写像である.

(理由)

 P:gf(x_1+x_2)=g(f(x_1+x_2))=g(f(x_1)+f(x_2))=gf(x_1)+gf(x_2)

 Q:gf(λx)=g(f(λx))=g(λf(x))=gλf(x)=λgf(x)

と置く. P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:f,gの合成写像は(左)Λ-準同型写像である

による.▢

例4

 f_1,f_2:M→N ( (左)Λ- 準同型)

とする.このとき

 f(x):=f_1(x)+f_2(x)

と置くと f(x)∈Nである.いま

 f:M→N

と書け, f (左)Λ-準同型写像を成す.

(理由)

①  f(x)∈Nであること

 P:f_1(x)∈N

 Q:f_2(x)∈N

 R:f_1,f_2:M→N

 S:x:=0

と置く.このとき P,Q,R,S\vdash P∧Q∧R∧Sより

 f_1(x)+f_2(x)=f_1(0)+f_2(0)=0+0=0∈N i.e.  f(x)∈N

であることがわかる.▢

②  fは(左)Λ-準同型写像であること

(ア)  f(x+y)=f(x)+f(y)

(イ)  f(λz)=λf(z)

を説明する.

(理由)

(ア)について

 P:f(x)=f_1(x)+f_2(x)

 Q:f(y)=f_1(y)+f_2(y)

 R:z:=x+y

と置く. P,Q,R\vdash P∧Q∧Rより

 P∧Q∧R:f(x)+f(y)

 =f_1(x)+f_2(x)+f_1(y)+f_2(y)

 =f_1(x)+f_1(y)+f_2(x)+f_2(y)

 =f_1(x+y)+f_2(x+y)

 =f_1(z)+f_2(z)

 =f(z)

 =f(x+y)

がわかる.

(イ)について

 P:f(λx)=f_1(λx)+f_2(λx)=λf_1(x)+λf_2(x)

 Q:λf(x)

 =λ(f_1(x)+f_2(x))

とくに NはΛ-加群 λf(x),f_1(x),f_2(x)∈Nであるから

 =λf_1(x)+λf_2(x)

と置く. P,Q\vdash P∧Qより

 P∧Q:f(λx)=λf(x)

を得る.▢