情報統合思念体への手紙

16号廃墟へ向かう道

Λ-準同型写像の意義

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

 M,N:(左)Λ- 加群

 f:M→N (写像)

とする.

 

☆ 写像とは何か?

 ここでは,言葉の意味について考えることはない.それが「抽象」である.たとえば(左) Λ-加群とは何か? と言われたとしよう.私は(今覚えている限りで)

①  λ(x_1+x_2)=λx_1+λx_2

②  (λ_1+λ_2)x=λ_1x+λ_2x

③  λ_1(λ_2x)=(λ_1λ_2)x

④  1x=x

をみたすような λ,λ_1,λ_2∈Λ(非可換環)及び x,x_1,x_2∈M(加法群)である,と答えたとする.では,非可換環とは何か? 加法群とは何か? 群とは何か? 二項演算とは何か? 順序対とは何か? 直積集合とは何か? 集合とは何か? というように用語の意味を遡り続けることになる(第一原因への言及).そして,最も重要なことは記憶というのは忘却するものである,ということだ.

 もし,仮に①から④を答えたからといって, Λ-加群の意味を知っている訳ではない.私は Λ-加群の性質・作用を知っているだけで,「その物自体」をわからない.それゆえ, Λ-加群それ自体に意味はない,と考える.私はこの無意味な物自体への質問を禁止する.私はただ Λ-加群というものを受け入れて,ただその物がもつ性質や作用を書くのみである.

 これより,抽象代数学での用語について物自体への質疑を禁ずる.もし,そのような問い質しがあれば,その質問者に対して事物の第一原因を答えて貰う.そして,集合や写像を考えるうえで,逐一その要素を考えたり,表示したりすることも止める.それが事物を抽象化する,ということに繋がると思うからだ.

 

 このとき

 P:f(x_1+x_2)=f(x_1)+f(x_2)

 Q:f(λx)=λf(x)

と置き, P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:写像fを(左)Λ-準同型写像

という.

例1

 N:Mの部分加群

とする.このとき,包含写像 M→N (左)Λ-準同型写像である.

(理由)

 P:f(x_1+x_2)=x_1+x_2=f(x_1)+f(x_2)

 Q:f(λx)=λx=λf(x)

と置き P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:包含写像は(左)Λ-準同型写像である

を得る.▢

例2

 N:Mの部分加群

とする.このとき,自然写像 M→M/N Λ-準同型写像である.

(理由)

 P:f(x_1+x_2)=\overline{x_1+x_2}

 =\bar{x_1}+\bar{x_2}  (剰余群の演算)

 =f(x_1)+f(x_2)

 Q:f(λx)=\overline{λx}=λ\bar{x}=λf(x)

と置き P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:自然写像はΛ-準同型写像である

がわかる.▢

例3

 f:M→N ((左)Λ- 準同型)

 g:N→P ((左)Λ- 準同型)

とする.このとき f,gの合成写像 gf:M→P (左)Λ-準同型写像である.

(理由)

 P:gf(x_1+x_2)=g(f(x_1+x_2))=g(f(x_1)+f(x_2))=gf(x_1)+gf(x_2)

 Q:gf(λx)=g(f(λx))=g(λf(x))=gλf(x)=λgf(x)

と置く. P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:f,gの合成写像は(左)Λ-準同型写像である

による.▢

例4

 f_1,f_2:M→N ( (左)Λ- 準同型)

とする.このとき

 f(x):=f_1(x)+f_2(x)

と置くと f(x)∈Nである.いま

 f:M→N

と書け, f (左)Λ-準同型写像を成す.

(理由)

①  f(x)∈Nであること

 P:f_1(x)∈N

 Q:f_2(x)∈N

 R:f_1,f_2:M→N

 S:x:=0

と置く.このとき P,Q,R,S\vdash P∧Q∧R∧Sより

 f_1(x)+f_2(x)=f_1(0)+f_2(0)=0+0=0∈N i.e.  f(x)∈N

であることがわかる.▢

②  fは(左)Λ-準同型写像であること

(ア)  f(x+y)=f(x)+f(y)

(イ)  f(λz)=λf(z)

を説明する.

(理由)

(ア)について

 P:f(x)=f_1(x)+f_2(x)

 Q:f(y)=f_1(y)+f_2(y)

 R:z:=x+y

と置く. P,Q,R\vdash P∧Q∧Rより

 P∧Q∧R:f(x)+f(y)

 =f_1(x)+f_2(x)+f_1(y)+f_2(y)

 =f_1(x)+f_1(y)+f_2(x)+f_2(y)

 =f_1(x+y)+f_2(x+y)

 =f_1(z)+f_2(z)

 =f(z)

 =f(x+y)

がわかる.

(イ)について

 P:f(λx)=f_1(λx)+f_2(λx)=λf_1(x)+λf_2(x)

 Q:λf(x)

 =λ(f_1(x)+f_2(x))

とくに NはΛ-加群 λf(x),f_1(x),f_2(x)∈Nであるから

 =λf_1(x)+λf_2(x)

と置く. P,Q\vdash P∧Qより

 P∧Q:f(λx)=λf(x)

を得る.▢