情報統合思念体への手紙

16号廃墟へ向かう道

Λ-加群の公理と部分加群の意義

  •  Λ- 加群の公理

 Λ:単位元をもつ非可換環

 P,Q,R,......:センテンス

 a,b,c,......:パラメタ

 M:加法群

 Λ×M:順序対〈λ,x〉の集合

i.e.  Λ×M:=\{〈λ,x〉|λ∈Λ∧x∈M\}

とする.このとき

 P:Λ×M→M, 〈λ,x〉\mapsto λx という積λxをMに入れる

 Q:

(1)  λ(x_1+x_2)=λx_1+λx_2

(2)  (λ_1+λ_2)x=λ_1x+λ_2x

(3)  λ_1(λ_2x)=(λ_1λ_2)x

(4)  1x=x   (1∈Λ:単位元)

と置く. P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:Mは左Λ- 加群という(P∧Qは公理)

 M:加法群

 x∈M

 k∈\mathbb{Z}

とする.このとき

(1)  k(x_1+x_2)=kx_1+kx_2

(2)  (k_1+k_2)x=k_1x+k_2x

(3)  k_1(k_2x)=(k_1k_2)x

(4)  1x=x

が成立する.なぜなら, \mathbb{Z}は環であるので(左) Λ-加群の公理をみたすから.これより, M \mathbb{Z}-加群ということができる.

 M:(左)Λ-加群

 L⊆M

( x∈L→x∈MよりパラメタxはΛ- 加群の公理をみたす)

とする.このときパラメタ λ∈Λに対して

 P:x_1+x_2∈L

 Q:λx∈L

と置けば P,Q \vdash P∧Qより

 P∧Q:LはMの部分加群あるいはMはLの拡大加群である

ということができる.

☆補足

 P:x_1+x_2∈L

 Q:λx∈L

の意味について Pは条件 x∈L→x∈M x∈M→x∈Lを合わせたものである.すなわち

 x∈L→x∈M

 x:=x_1+x_2   M上の定義 ①

に対して

 x∈M→x∈L i.e.  x_1+x_2∈M→x_1+x_2∈L

が成立するときである. λxも同様にして

 x∈L→x∈M

 x:=λx   M上の定義 ②

について

 λx∈M→λx∈L

が成り立つ場合である.但し,この方法は循環的なのでうそつき村問題が潜んでいる.もちろん,数学は集合を要素とした集合を考えない素朴集合論を採用しているからパラドックスは起こらないが,公理的集合論ではこのような構成(部分群や部分加群のこと)はできないことに注意するべきである.また,①について x:=x_1+x_2と置いており, x,x_1,x_2何れもパラメタであるから, M⊂L乃至 M=Lとは限らない(成ることも成らないこともあるので一般に不成立である).②も同様である.

 さらに,この文論理(センテンス)は①や②のように仮定(定義)に依存しているので,並行的に認識できる述語論理でも∀-導入が適用不能であるから M⊂L乃至 M=Lとは成らない(述語論理の場合は不成立が確定している).つまり,これが文論理に置けるパラメタ(自由変数)と述語論理に置ける束縛変数の違いだ,ということを窺い知ることができる.